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ロータリークラブ (1) [ワークショップ]

 4月17日(金)夕刻。京浜急行の金沢八景駅からシーサイドラインに乗り換えて2つ目の野島公園駅で降りる。向かうは横浜市野島青少年研修センター。

同センターで開催される「第25回ロータリー青少年指導者養成セミナー」のプログラムの一つ、「演劇ワークショップ」を担当させて頂くことになったのだ。

 同行はミュージカルクラスの講師仲間、松永さち代君、西島美子君。他にお手伝いとして羽鳥塾の塾生、浅野哲、門川明日香、菅野直美、坂本一海、野口智世、麦谷八絵の6名。

 ところでロータリークラブとは一体いかなる活動をしているのか? 国際ロータリー第2590地区のガバナー、清水良夫氏がパンフレットに書かれたメッセージから一部引用させて頂く。

 「世界の事業・専門職務のリーダーや地域社会のリーダーであるロータリアン(会員)が世界的なネットワークを作り、地域社会、国際社会において人道的な奉仕活動を行い、職業における高い道徳規準を奨励し、世界中で友好と平和を築くために尽力しています」。

 高邁な理想、理念の元に活動されている組織であることが分かる。また、セミナーについてはパンフレットにこう謳われている。「14~30歳までを対象に指導力や善良な市民としての資質を伸ばすことを目的とした集中研修プログラム」。

 何とも大変は仕事を引き受けてしまったのではないか…。正直なところ、当初、相当心配になった。

 セミナー参加者は90名弱で男女比はほぼ半々。同センターに2泊3日で合宿生活を行い、互いの親睦を深めながらハードなスケジュールをこなしていく。

朝6時に起床、散歩から始り、「アイスブレーキング」、「救急法講習」、「AED」、「日本の食糧事情」、「裁判員制度」、「模擬裁判体験」等々、夜までびっしりとプログラムが組まれている。

「リーダーシップとコミュニケーション」等の基調講演もあり、実に多種多彩。そして17日、18日の最後を締めくくるのが私の「演劇ワークショップ 6つの物語/様々な人生」であり、最終日19日の午前中には、その発表会も行う。

 さて、いかなる様子であったか? 詳細は次回。


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銀河劇場「オンステージ・ワークショップ2009」 [ワークショップ]

 2月8日の日曜日。昨年に引き続き、今年もまた銀河劇場での「オンステージ・ワークショップ」の講師を務めさせて頂いた。 テキストは昨年と同様、ホリプロで上演された「ピーターパン」の台本から私が抜粋したものである。参加者は9歳から40歳超の27名。母娘で参加という微笑ましいお二人もいらっしゃった。

 講師陣の顔ぶれは昨年と変わっている。歌唱指導の鈴木京子君は羽鳥塾ミュージカルクラスの講師仲間。劇団四季在籍中に「オペラ座の怪人」のクリスティーヌ、「美女と野獣」のベル、「エビータ」のエビータ等々、数々の主役を務めた実力派だ。「名選手、必ずしも名監督とはなり得ず」は大はずれ。彼女はトレーナーとしても群を抜く力を持つ。

 振付の羽根渕章洋君も元劇団四季。「キャッツ」のミストフェリーズ、「ライオンキング」のティモン等々、多くの作品に出演し、活躍していた。現在、現役のダンサーを続けながら、クラシックバレエの講師や振付家として活動している。

 アシスタントは坂本一海君。私の主宰するミュージカルクラス、演技クラスの両教室で学んでいるバリバリの若手ミュージカル女優さんだ。秋に上演する「夜物語」への出演も決まっている。将来はダンス指導や振付の分野にも才能を発揮していくことだろう。

 さて、ワークショップは昨年と同様の流れで運んだ (2008年 3月7日 演劇雑記参照)。午後5時過ぎ、舞台では高揚した表情で並ぶ参加者の眼前を緞帳(どんちょう)幕が下ろされていく。一日の成果を発表する「本番」が終了したのだ。劇場関係者の声をご紹介しよう。

 「ワークショップを受ける前と後で、素人さんでもこんなに変わるんだ?! もう、感動して涙が出た!」 この感想を漏らした御仁、若い方ではない。演劇界で40年以上も精力的に仕事をされてきた方だ。他にも見学者の多くが「感動した」とおっしゃってくださった。

 では一体何が皆さんにそう言わしめるのか? 短時間ながら自分の課題に必死に取り組む参加者の姿である。そこにはプロの俳優にありがちな「うまくやりたい」、「成功して有名になりたい」などの邪心はない。ただただ必死に「やり遂げたい」という熱い想いがあるだけだ。

 脇目もふらず、目の前のことに全力を尽くす。ありきたりな言葉だが、その姿勢が見ている者を感動させたに違いない。指導している私だって目頭が熱くなった。

 一般の方が劇場に親しむ機会を提供する、この銀河劇場の「オンステージ・ワークショップ」。副題は「ミュージカル俳優入門 レッスン~お稽古まで」。ミュージカル俳優が日頃自らに課す訓練や、公演のために踏む稽古プロセスを、たった半日ほどで体験する試みである。

 いつも客席から見ているだけの舞台上で、束の間ながら実際に自分が俳優として演じ、歌い、踊ったという経験は何物にも代えがたいはずだ。参加者の皆さんがこれからも熱い想いを持って演劇を支えて下さる観客となられることを強く信じている。このような試みは一般の方が劇場文化へ関心を持たれる良い機会だ。是非全国各地で行われることを祈りたい。

 ワークショップ当日は「ケーブルテレビ品川」さんの取材も入っていた。「きょうの参加者の出来は何点ぐらいですか?」のインタビューに私は自信を持って答えた。「100点満点です!」


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日本一の栄冠!~大阪のワークショップに参加した先生と生徒たち [ワークショップ]

嬉しいニュースだった。日本弁護士連合会主宰の「高校生模擬裁判選手権東西対抗決戦」で、京都教育大学付属高校が見事日本一の栄冠に輝いたのだ。

昨年9月、大阪高生研 (おおさか・こうせいけん/全国高校生活指導研究協議会大阪支部の略) のお招きで「教師のための発声・表現・演劇講座」なるワークショップの講師を務めさせて頂いた。2005年の東京大会に引き続き2度目である。

参加者は現職の教師の皆さんの他、高校生も含め38名。前回と同様、「飛んだり、跳ねたり、腕を回したり」しながらの発声練習を終えると、質疑応答に入った。

「俳優にとって観客に言葉や想いを届かせる技術の習得は必要不可欠。教育現場でも同じではないか」と私が話すのを聞いてのことだったと思う。高校生から質問が上がった。

「観客を意識してしゃべるんですか?」、「そうです」、「どんなことに注意すればよいですか?」。

おそらく「説得力のある話し方」等々、多少の技術的アドバイスをしたはずだ。しかしこの時、彼らが模擬裁判の大会に出場する京都教育大学付属高校の生徒さんたちとは知らなかった。

後日、指導していらっしゃる札埜(ふだの)先生から、上述の大会に出場します、とのメールを頂いて初めて知った次第だ。

「彼らが模擬裁判に…?」。

11月、大会は東京で行われた。彼らの奮闘振りをこの目で見たかったが、決戦当日の都合がつかず、残念至極。

「模擬裁判の甲子園」ともいえる同選手権。一つの事件を素材に争点を見つけ出し、弁護側・検察側に分かれて「試合」を行う。

今回の題材は、「男性が左胸を刺されて死亡し、男性の妻の兄が犯人として起訴されたが、殺意を否認している」というもの。まるでドラマだ。証拠書類をもとに論理を組み立て、主張・立証もするらしい。

予選から高校生達の戦いぶりを見ているプロの弁護士の評は真に興味深い。

「~相手に訴えかけたり説得したりという本来あるべき姿を、プロの法律家以上に表現している」。

これ、俳優への評ではありませんぞ…。


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生き方が悪かった…?! [羽鳥塾]

新聞や本を読み、テレビだったらドラマだけでなくドキュメンタリーも観る。私が日頃生徒に「追体験」として勧めていることだ。だが、こういったことに関心を向けない俳優が時々いる。少々驚きだ。一体何を表現したくて俳優を志したのか…?

彼らは自分の感性に少なからず自信を持ち、自分は何かを表現できる人間だと信じている。だからスポットライトを浴び、お客様の拍手を頂きたいと願う。悪いことではない。だが俳優志望の動機がそれだけだとすれば寂しい。

俳優は人間を表現する。だから俳優に求められるのは人間観察と洞察力であり、それを表現する高い演技力だ。人間というものに迫る真摯な姿勢が役の造形を深めるのだ。

人が一生で経験し体験できることは様々。しかし一個人に限れば、それほど多くの経験や体験ができるわけではない。だから俳優は自分が経験や体験したことのない人生を演ずることにもなる。日頃から知性と感性をストックするための「追体験」が必要な所以である。

それには読書を初め、美術、音楽なども含めた芸術鑑賞はもちろんのこと、自分の周りの人間たちや社会への関心を持つことが必須であろう。そういった追体験によって得られた知性と感性は無意識下に置かれ、ある時演技力というフィルターを通して表現へと至る源となる。

演ずる登場人物が観客の共感を得なければ、劇場には何も起こらない。社会に関心がなく、人間を深く掘り下げてみようともしない俳優が、劇場空間の中に感動を呼び起こせるだろうか。「あー、ああいう人物、いるいる!」、「分かるなあ、その気持…」、「そうなんだよ!そう!」etc,etc…。こういった観客の共感を得た先に「感動」がある。感動が生まれてこその「芝居」である。

一方、客席には人間洞察に長けた人物が多く存在する。人生の実相を知り尽くしている観客がいるのである。彼らを納得させる知性、感性、技術が俳優には必要なのである。

もう30年以上も前になるか。求められる演技ができないベテラン俳優に、演出家がこうダメ出しをした。「結局、お前はこれまでの生き方が悪かったんだ」。

稽古終了後、更衣室で数人の先輩方が、かのダメ出しについて口角沫を飛ばしている。掃除要員としてドアの外で待っていた私に、こんな言葉が聞こえてきた。「ダメ出しでも直せるものと直せないものがある。これまでの生き方が悪かったなんて言われちゃ、どうしようもないよなあ!」。…確かに…。

今思う。このダメ出しは「俳優として日頃からの人間観察や洞察の勉強が足りない」という意味もあったのではないか。

俳優としての生き方…、俳優として生きる覚悟…。相当なものが必要だと改めて思う。


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金志賢コンサート③ 震えた! [舞台]

コンサート本番当日。赤坂区民センター。

朝9時に仕込みが始まり、稽古開始は14時。通し稽古は16時から予定されていた。本番が19時だから、慌しいことこの上ないスケジュールである。

14時からの稽古はジーヒョン君のコンディションを考慮しながら、1幕の幕開きからナンバーを中心に運んでいく。私の司会やトークの稽古をしている時間はない。照明担当の大場さんが限られた時間の中で明り合わせを黙々と続けてくれている。

稽古は進むが、案の定スケジュールが押し加減になり、通し稽古開始予定の16時を過ぎてしまうことは明らかだった。舞台監督の河口さんが心配そうな顔をしている。経験豊かで場数も相当踏んだスペシャリスト。緻密で丁寧な仕事をしてくれる頼もしい存在だ。「このままだと通し稽古の時間がなくなりますが…」と訴えてきた。「やりません」と私が答えると、一瞬意外という表情を見せた。

通し稽古をやれば、ジーヒョン君の疲労が増すのは確実。それよりも本番での彼女に賭けたほうがいい。「舞台に立った時、彼女が歌うことだけに集中すればいいようなお膳立てだけはする。通しをやる必要はない」。私の考えを河口さんはすぐに理解してくれた。

そして本番…。幕開きの「When I need you」から、ジーヒョン君は飛ばしに飛ばした。袖中で聴いている私は震えた!どの曲も素晴らしい!どんな状況でも最高の歌を聴かせるのがプロというものだろう。彼女の実力は知っており、彼女を信じてはいたが、結果は予想以上の出来映えだった。

ジーヒョン君は確実に「進化」していた! 以前より歌がうまくなっている。本番で力を出すために、稽古では調整していたのだろう。特に2幕ラストの「川の流れのように」と、カーテンコールの「あの鐘を鳴らすのはあなた」は圧巻だった。

私はこの2曲にこだわっていた。「川の流れのように」はジーヒョン君が好きな曲の一つではあるが、レパートリーではない。さらに「あの鐘を鳴らすのはあなた」は彼女にとって全く知らない初めての曲だ。しかし私は主張して譲らなかった。「これからも日本で活動を続けるなら、絶対にこの2曲を歌い続けていくべきだよ!」

今回のコンサート。この2曲をお客様に聴いて頂くために他の曲があったと言っても過言ではない。だからこそ歌唱力に定評のあるジーヒョン君に、何と歌い方のアドバイスまでしたのである。この2曲に対するお客様の評価が高かったのは本当に嬉しい。そして見事に歌いこなしたジーヒョン君に心から敬服する次第である。

さて、コンサートには問題点もあった。私の司会である。舞台に出演するパフォーマーとしての勘がなかなか取り戻せなかった。何とか落ち着きが見えたのは最後の3回目の公演あたりか。やはり私はもう舞台に立つ人間ではなくなっているのかもしれない。反省…。

ともあれ、ジーヒョン君の歌を初めて聴いて頂いた観客にはその素晴らしさを知らしめ、以前からのファンにはこれまで以上に彼女の歌声を堪能して頂いた。コンサートはまずまず成功したと言えるのではないだろうか。

ジーヒョン君の歌声はこれからも聴く人の心を捉えて離さないだろう。、彼女の今後の活躍を信じて止まない。


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金志賢コンサート② 優先順位 [舞台]

韓国での「シカゴ」公演出演のため、日本と韓国を行き来するジーヒョン君。そんな過密スケジュールの中でも、彼女はコンサートで予定されている20を越える曲の練習を重ねていた。肉体的にも精神的にもかなりの負担であったに違いない。

「シカゴ」の公演が終わった。さあコンサートに全力投球!稽古の日数、時間は限られている。伴奏者との歌合せを数日行った後、田園都市線の溝口にある「男女共同参画センター」という劇場を、午後だけ2日間借りて稽古が行われた。本番は翌々日、2日後だ。

稽古初日。私たちに気を遣わせまいと気丈に振舞ってはいるものの、疲労がたまっているのか、本番を目前にして彼女の体調は必ずしも万全ではない。私の目にはそう映った。

限られた2日間の稽古で何を優先するか?為すべきことは多いが、すべてできるわけでない。コンサートで一番大事なのは、彼女の歌声を劇場に響き渡らせること。存分に自分の歌をステージで歌ってもらうこと。これに尽きる。

稽古開始! 全体を仕切る私は、とにかくジーヒョン君に「流れの中でナンバーを順番に歌っていけるような喉になってもらう」ことに終始した。歌曲のジャンルが異なるので、歌唱法をその都度変えなければならない。喉への負担が大きいことは分かっていた。音響さんのサポートは欠かせない。

音響を担当してくれるのは私と同年生まれの安藤さん。機材を持ち込んで徹底的にジーヒョン君のボーカル・データを取り、本番のために入念な準備を黙々と重ねていた。私は彼に一つだけ注文した。「ジーヒョン君のボーカルを、うるさ過ぎない限界まで客席へ抜いて下さい」。

歌声を演奏の一部とし、全体として調和の取れた聴きやすさ、心地よさを目指すスタイルのコンサートはよくある。だがジーヒョン君のボーカルは違う。観客の心にえぐり込んでくるようなインパクトある彼女の声量と表現を、耳障りにならないギリギリのところまで劇場に響かせてほしいのだ。安藤さんは「さも当然と」ばかりうなづいてくれた。 

稽古が進む。本来なら舞台における細かい演出上の段取りをあれこれつけたいところだったが、歌うことに全力を傾けているジーヒョン君に余計な負担はかけられない。そのためには突然の構成変更も辞さない。

 「スタッフの皆さん、1曲カットしまーす」。私の声が劇場に響き渡る。

歌唱法の調整がうまくいかないナンバーを1曲はずすことにしたのである。必死にナンバーに取り組んでいる彼女のために、少しでも不安の材料は払拭しなければならない。

その後、稽古はスムーズに運んだ。1日目が終わり、2日目の稽古も彼女の体調を考え予定より早めに切り上げた。

さあ、いよいよ本番!


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金志賢コンサート① 構成思案 [舞台]

金志賢(キム・ジーヒョン)君。以下、ジーヒョン君と呼ばせて頂く。

8月。手元にある50曲ほどのリストをにらむ。ジーヒョン君のレパートリーだ。さて、どの歌を選ぶか…?

ミュージカルファン、特に劇団四季のファンであれば、ジーヒョン君のことを知らない人はまずいまい。一方、今回来場する観客の3割ぐらいは港区民を含む一般客との見込みも立っていた。

知る人ぞ知るキム・ジーヒョン君を紹介するコンサート。「こんな素晴らしい歌い手がいるんだ!」と、彼女を初めて見る一般のお客様にもびっくりしてもらえたら、こんな嬉しいことはない。

ナンバーを中心に運び、芝居仕立てにはしない。ただしストーリー性は持たせる。テーマをどうするか…? ジーヒョン君の「今日に至るまでの道のり」。これで行こう!

二部構成のコンサートにすることを決め、ナンバー選びを開始。ポピュラー、ゴスペル、ミュージカル、日本歌曲。これらを英語、韓国語、日本語で歌う。大事な幕開きとラストは以下のように。

①1幕の幕開き:歌声が客席にダイナミックに響くポピュラー。

②1幕ラスト:劇団四季時代のミュージカル・ナンバー。

③2幕の幕開き:再び、歌声が客席にダイナミックに響くポピュラー。

④エンディング:絶対に日本歌曲でしめる。

大まかな枠組みが決めてから、都合20曲ほどの選曲も終えた。次はこれらのナンバーをどうつないで行くか…? コンサートのコンセプトを明確にしなければならない。それ次第でトークのスタイルが決まる。うーん…?

「洗練されたボーカルと泥臭い司会」。これで決まり! 予算のことも考慮し、司会は私がやることに。舞台に立つのは実に4年ぶり。本格的な劇場の舞台となると7年ぶりだ。だが、何とかなるだろう。演技するわけではない。司会だ。それも自分が書いた構成台本。大丈夫、大丈夫!

これがどんなに甘い考えであったかを私は本番当日に知ることになるが、それは最終回に譲る。


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仕切り直し [ご挨拶]

前回までは、かつてホームページ上に載せていたものを転載していた。今回からは出来立てホヤホヤの文章。仕切り直しをして始める。

私は芝居屋。俳優やスタッフの協力を得て、舞台の上から作品が観客に語りかけるものを整理統合する。世の中には無くてもいい仕事かもしれない。しかし、あっても決して無駄にはならないし、人々に喜びや感動を与えることができると信じ、誇りを持っている。

私は残りの生涯も演劇の世界で生き、舞台の上からメッセージを放ち続けたいと願う。だから作品を創り、俳優も育てる。

日々の営みは、明日の観客の感動のために。

このブログは私の足跡となる。


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肉体に刻み込む マグマ 2008年 7月19日 [羽鳥塾]

テキストの通りに台詞を言えない生徒が少なくない。間違えて覚えていても平気の平左だ。

「台詞が正確に覚えられなくて」とはよく聞く言葉だ。しかし台詞は覚えるものではない。体に刻み込むものだ
台詞そのものは演技のうちの一部でしかなく、出口に過ぎない。肝心なのはそれ以前の段階にある。

しかし観客に「物語の筋を伝える」という意味では、台詞は大きな役割を担う。出口を誤れば、それまでの苦労、努力が全て水の泡。

先日読んだある雑誌に、元映画俳優だった料理人の話が載っていた。若い頃、彼はロケ先で台詞が覚えられずを連発。困った末、共演していた大女優さんに相談した。返ってきた答えはこうだ。


「台詞なんて千回も言えば覚えられるわよ。私は目、耳、舌、身体と五感のすべてを使って臓腑に叩き込むようにして覚えたわ」。

…千回…。彼は雑誌の中でこう続ける。
「決められた台本というマニュアルでも、体に徹底して叩き込めば自然に操れる。けれどその徹底して叩き込むというのがほとんどできない。

体に刻み込んだことは忘れない。自転車に乗る、泳ぐ。小さい頃に体で覚えたことは大人になっても忘れない。

肉体表現として演技をとらえること。テキスト(台本)を読み解き、登場人物が体験したであろうことを想像力を使い、自らの体験として「実際に体を動かし具体的に演じてみる」。

マイムで構わない。そのことで起こってくる感情を体験しておくことは役作りに非常に有効だ。
こういった準備を繰り返す中で、テキストを何度も読み返し、「役の心情」をストーリー展開の中でつかんでいく。やがて各シチュエーションでの「心の置き所」が定まるだろう。
 

次に台詞を体に刻み込む。登場人物や台詞の解釈は確かに必要。だがそれだけでは肉体表現に至らない。「役の心情」をつかみ、「心の置き所」が定まった上で、台詞一つ一つの言葉の持っているイメージとボリュームを体に刻んでいく。雰囲気にならずに台詞を具体的なイメージでとらえていかなければならない。

「手切り」、「仕分けのマイム」、「イメージのマイム」を駆使して台詞の内容・意味を取りながら、「伝えたい」という強い意思を持ち、腹式の発声で何度も何度も台詞をしゃべり、体に刻み込む。

台詞や演技が己の血や肉となり、全身の細胞から発せられるような肉体のメカニズムを一旦作り上げておく。その結果、「マグマ」が意識の奥底に沈殿するであろう。応えたい、訴えたい、表現したいという「衝動」だ。だがその存在は一時忘れてしまって構わない。

やがてあることをきっかけに「マグマ」は噴出する。「あること」とは、すなわち他の登場人物や状況、事件等々、外部からの「働きかけ」である。想念だってきっかけになる。

俳優は「アクター(行動する人)」というよりも、「働きかけ」に対する「リ・アクター(反応する人)と言うにふさわしい


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5年目の決意 2008年4月25日 [羽鳥塾]

時は止まらない。気がついたらシアタープロジェクト羽鳥を立ち上げてから5年目を迎えている。

3月、演技クラス開講当初からの生徒さんに「羽鳥塾」の誕生日を祝うバースデー・カードを頂いた。
2004年のレッスン初日の日記にはこうある。

14時、羽鳥塾のグループレッスン初日。一人風邪による欠席で、塾生5人で開講。ハウステンボスの皆からお祝いのお花と手紙が届く。嬉しい。○○さん、『映画に出たい』の個人レッスン。

自問する。立ち上げた時の理念にブレはないだろうか? 

「俳優の育成」、「作品創り」、共に「プロ志向」であることに変わりはない。だから発表会はやらず、「公演」を目指す。

来年、第一回公演として「ファンタジーミュージカル夜物語」を予定しており、今劇場を探している。自力で公演を打つのに5年を要するということか。(まだ実現したわけではないが。

優れた作品を創る力のある演劇人は数多くいらっしゃる。だが我々もその方々に比べ、そう劣らない力量があると自負している。

我々は地味ではあるが地に足をつけている。派手ではないが確固たる演劇観を持っている。

何年もかけて創られ、多くの観客に支持を得た海外ミュージカル作品を、我々は俳優としてだけでなく、スタッフとしても体感できたという何物にも代えがたい経験を持つ。門前の小僧という言葉があるが、まさにミュージカル創りのノウハウが体に刻み込まれている。

我々は決して安易な妥協はしない。「夜物語」の出演者が羽鳥塾の生徒だけでは有料公演に値しないとなれば、一般からの俳優も公募しよう。そう決めている。「プロ」である限り、お金を払って劇場にいらっしゃるお客様の立場で作品を創らなければならない。でなければ我々に未来はない。

最近になり、美術、音楽のセクションで新しい才能と出会うことができたのは嬉しい。もちろん上演にこぎつけるには、創作スタッフ以外にもマネジメント分野での人材が必要だ。我々は今、そういった才能と情熱のある人間も求めている。

困難は続くだろう。しかしやり抜かなければならない。やり遂げなければならない。すでに台本と曲は出来上がっている。後は作品の練りこみだけだ。羽鳥塾ミュージカルクラスでは、「夜物語」をテキストとしてのレッスンも始まった

シアタープロジェクト羽鳥設立5年目を迎え、新たに気を引き締める日々である。


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